■オーファンズ・あらすじ
物語の舞台はアメリカ・フィラデルフィアのまち。
兄弟が暮らす、小さなアパートの一室。
時代は現代。(この舞台においては。元はもっと昔らしい。)
ちなみに「オーファンズ」とは、孤児達、という意味。
登場人物は、孤児で、強請や強盗で金を稼ぎ、
弟を暴力で支配しているトリート。(椎名桔平)
その弟で、外の世界のことは一切知らず、臆病で
兄の支配を受け入れながらも好奇心旺盛なフィリップ。(伊藤高史)
そして、そんな兄弟の前に突然現れてあっという間に
二人を懐柔してしまい、自らは父親的役割を果たし、
擬似家庭を築こうとする一匹狼のやくざ・ハロルド。(根津甚八)
物語はこの3人のみで進んでいく。
≪前半≫
トリートは、まちで強請やスリをして金をもって帰ってくる。
弟のフィリップは、それを1日中家から一歩も出ることなく
クローゼットの中でうずくまって待っている。
トリートは、家族や誰かからの愛情を受けて育った記憶がなく、
自分や、弟へ対する愛情表現も暴力をもってしか出来ない。
そして、弟への支配欲が強く、弟の自立を嫌ってフィリップには
「外へ行けばアレルギーで死ぬ」と脅し、家の中に閉じこめているのである。
フィリップは、そんな兄からの支配を受け入れ、
日がなテレビや窓から見える外の世界を見て過ごしている。
テレビから流れるものの名前や言葉は、すごく良く覚える。
兄に隠れて、こっそり本の中の単語に線を引き、辞書で調べたりする。
外の世界に恐れながらも、好奇心から必死に知ろうとしている。
しかし、彼自ら外へ行くことは出来ず、兄がいなくては生きてもいけない…。
そんな微妙なバランスを保っている兄弟の前に
現れた一人の中年男・ハロルド。
彼はまちで泥酔したところを、トリートが強盗目的に誘い込んできたのだ。
ハロルドは、酔っぱらってトリートを「我が息子」といい、
自らの孤児だった過去を話す。
トリートは、ハロルドが眠り込んだ隙に彼の持っていた鞄を探り、
莫大な金額の株券や取引書を見つけ、大変な資産家であると目を付け
彼を誘拐しようとする。
そして、ハロルドをイスに縛り付けるとフィリップに見張りを命じて出掛ける。
やがて気が付いたハロルドは、フィリップの隙をついて縄を抜けてしまう。
「どうやって抜け出したの?」と驚くフィリップにハロルドは
「魔法を使ったからさ。」と応える。
そんな男の大胆さ、包容力、魔法という魅力に満ちた言葉…
フィリップにとってすべてが衝撃的だった。
靴ひもを結べないフィリップに、ハロルドは
黄色のローファーを買ってやるという。
他人に触れられることを恐れるフィリップに勇気を持てといい、
ほかにも何でも買ってやる、知識、マナーを教えてやるという。
フィリップは、不思議な魅力を持つハロルドにだんだんと心を許し、
彼におそるおそる近づいてゆく。
ハロルドは、その肩をそっと抱いてやるのだった。
やがて、トリートが帰ってくるとイスからハロルドが
いなくなっているのを見てフィリップを攻める。
ところがハロルドは、トリートに自分のボディーガードとして雇うといい出す。
トリートは人の下で働くのが嫌だといい、ナイフを取り出しハロルドを殺そうとする。
しかし、ピストルを取り出したハロルドにあっけなく屈服する。
ハロルドは、トリートに破格の報酬を約束し、兄弟に贅沢をさせてやるという。
トリートも、力で屈服させられ、表面上はハロルドに従うことにした。
こうして、3人の男の奇妙な生活がはじまる…。
≪後半≫
箱の上に黄色いローファーが乗っている。
宝物の王冠のように、大切そうに、うやうやしく掲げてみせるフィリップ。
身なりの良い服も、黄色いローファーも、新しいきれいなソファも、
みんなハロルドが買ってくれたのだ。
トリートはスーツを着込み、髪もきちんとし、
ハロルドのボディーガードとして、また片腕として働きはじめていた。
ハロルドも、いつの間にか二人の父親的存在になっており、
即席の擬似ファミリーは上手くやっていっているように見えた。
しかしまだ、トリートは自制心が乏しい。
フィリップは、外の世界へ出ていくことが出来ない。
ハロルドは、ローファーが上手く履けないでいるフィリップに
靴べらを与え、またあるときは、電気がつくのは魔法の仕業だという。
フィリップはそんなハロルドに惹かれ、知識を与えられ、
新しい料理の味を知り、少しずつ自分の世界を持ち始め、兄の支配から離れていく。
トリートは、弟が自分の手を放れ、自立していく姿に、
自分はもう必要とされないのかという悲しみと怒りを知る…。
ある日、ハロルドから重要な仕事を受けたトリートが帰りにバスの中で、
黒人の大男をピストルで脅したことを、自慢げに話す。
ハロルドは、「もし、黒人がピストルで脅しても
席を立たなかったらどうする気だった?」とトリートを問い詰め、
トリートは「ヤツの脳天をぶち抜いたさ!」と大威張りで応える。
「その後はどうする?」更にいわれると
「考えていなかった。」とトリートは浅はかさを認める。
自制心を持てないうちは、仕事を任せられないと
ピストルを取り上げようとするハロルド。
しかし、もう一度チャンスをくれというトリートに、
ハロルドは同じシチュエーションを再現し、彼を試すことにした。
大男役をフィリップにやらせ、自分は身障者を演じ、
大男に席を替わってくれと懇願する。
しかし、大男は無情にも席を譲ろうとせず、傍若無人に振る舞い続ける。
その間に立って、自分の自我を懸命に抑えようとするトリート。
しかし、これまで直接的な感情で行動して生きてきたトリートは、
忍耐の限界を突き破り、叫びだし気絶してしまう。
気が付いたトリートは、深く傷つき、家を飛び出してしまう。
「少しやり過ぎたかな…。」苦々しく呟くハロルド。
擬似家庭が崩れはじめる。
兄がいなくなっても、なかなか外に行くことが出来ないフィリップ。
ハロルドは、家の窓を開け、外に出ても大丈夫なことを告げ、彼に地図を与える。
自分は、銀河系のほんのすみにある、地球のアメリカという国、
フィラデルフィアのまちに立っている!
自分の居場所を知ったフィリップは、歓喜の叫びをあげ、外へ飛び出してゆく。
そして、トリートが帰ってくる。
かつては、必ずそこには弟がいた。
フィリップは、外へ行くことなんて出来ないのだから。
しかし、そこには誰もいない。
トリートは、堪らない孤独を感じ、フィリップがかつてうずくまっていた
クローゼットから母親のコートを取り出し、抱きしめてやがて泥酔して寝てしまう。
そこへ、フィリップが帰ってきた。
フィリップは、地図を取り出し、自分はもうどこへでも行けるという。
そして、旅に出るという。
トリートは、かつての二人だけの世界に戻りたかった。
しかし、自立し、変わってしまった弟に唖然とし、哀しみ、怒り荒れ狂うあまり、
弟の手から地図を奪い、引き裂く。
フィリップは泣き叫びながらも、地図を拾い集め、
「オマエを育てた俺を捨てるのか!」と詰る兄に向かって叫ぶ。
「それでも、僕は旅に出る!」
トリートは、絶望にたたき落とされる…。
そこへ、ハロルドが帰ってきた。腹にはおびただしい血がにじみ溢れている。
重傷を受けながら、兄弟の元へ帰ってきたのだ。
ハロルドは、泣きじゃくるフィリップに、「私が教えた、勇気を忘れるな…。」といい、
トリートに「我が息子よ…。」とつぶやきながら、息を引き取る。
ハロルドが死んだことも分からずに「ハロルド、魔法をかけてくれなきゃ…。」と
すがり泣くフィリップに、「死んだんだ、フィリップ、分からねぇのか?」と
ハロルドの手に触れる。
「…あんたに、初めて触れたよ…。」呟くトリート。
そのとき、トリートの体の中から感じたことのない痛みがこみ上げてきた。
声にならないほどの、心の痛み。
あまりの苦痛に、トリートは倒れ、のたうち回る。
起きあがったフィリップが、母親のコートをトリートの肩に掛けようとする。
それを払いのけるトリート。
なおも、すがりつき、苦しむトリートを抱きしめるフィリップ…。
二人を見つめるものは、ハロルドの亡骸以外、誰もいない…。
※「オーファンズ」公演記念パンフレットのあらすじを参考にしましたが、
文章自体は管理人のオリジナルです。
=禁・無断転載=
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